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球磨川河畔の小学校体育館での夜間の練習は、夏は5分もすると、滴り落ちる汗で床が滑り、冬は床に素足で立っただけで、寒さが頭のしんにまで突き上げてくる困難を克服して稽古に励んだ。
平成3年2月16日、熊本県立劇場で上演され、NHKテレビによって全国に放映された「文政三年棒踊り」は、努力の結果獲得した江戸時代の農民の姿と祭りを紹介し、大きな反響を呼んだ。熊本県立劇場は基金でカツラと衣裳を新調して提供した。
いま、球磨村の人々はこれを踊るのが生きがいだと言っている。
特に詳細は記載しないが、熊本県立劇場は熊本県宇土市に眠っていた26基の大太鼓を新たに作曲し、これに100名の女性による踊りを振付け、頭には豆電球を仕込んだ桧製の上品な冠り物も作り、衣裳、帯、草鞋、扇子2丁を各個に揃え、「新伝承・宇上太鼓26」と館長が名づけて、5年がかりで完成している。
この端緒は戦前から市内の各集落の所有していた大太鼓が戦時中に皮が破れ、戦後は胴を田圃に埋めて、中で堆肥を作っていた状況を知った若者達が、活用を熊本県立劇場に相談したことであった。

 

(5)「こころコンサート」

文化会館でありながら、文化を巾広く考え、「行動する美しい劇場」の旗印しの下に、現場主義に徹する熊本県立劇場は、福祉も文化であるとの考察に立ち、ハンディを持つ人達と県民が、手を取りあい、肩を組み、心を結びあわせて大合唱する「こころコンサート」の企画を平成2年3月に企画し、3年の歳月をかけて、遂に世界初の型式による4,000人の大合唱の上演に成功し、多くの困難を越えて、平成9年6月15日には、第1回よりも500名も多い参加者を得て、第2回「こころコンサート」を実現している。ハンディを持つ人達による音楽会や音楽家が施設をボランティアで訪問して演奏する場合はよくあるが、健常者と1年間にわたって共に音楽を練習し、最後にあらゆる種類の障害者が健常者と一堂に会して大合唱する型式の音楽会は、調査の結果、世界で初めての上演であることがわかった。
コンサートの目的は音楽性ではなく、上演前日までの1年間に、ハンディを持つ人と県民が、どこまで心を結びあえるかであった。
当初は行政がタテ割りのために、障害の種類が異っても触れあう機会が乏しいのに、健常者と1年間も練習するなどは信じられず、膨大な経費と人手を必要とするから、計画は中止したほうがよいと、関係する行政機関や福祉団体から、しばしば忠告を受

 

 

 

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